O.H.M.S.S./英国秘密情報部

はじめに
スパイ発祥の地、大英帝国。情報部というとCIAとか有名ですが、英国にはアメリカにないロマンが漂ってますねぇ。なんせ300年の歴史ですからね・・・。On Her Majesty's Secret Service/女王陛下の秘密情報部というネーミングが生まれるのもロマンのなせる技。フレミングの小説における情報部はディテールは細かいけれど全体像が見えないのが特徴。後年MI6に落ち着いたのも、映画の影響によるものでしょう。小説のシリーズでは、交換テロの時代、ソ連崩壊後に行われた二度の大改革の波を乗り切って現在に至っております。
フレミングはボンドの所属する組織は架空のものとして設定している。海軍情報部時代の上司ゴドフリー提督が掲げた理想の情報部システムを作品にとりあげ、あくまでも海軍情報部か再編されてできた国防省の組織であり、チーフは海軍提督の首相直轄の機関と定めている。各国に支局を置いているのも特徴。
ちなみにSIS(俗称MI6)は陸軍情報部が再編されて出来た外務省の組織でチーフは陸軍提督の外務大臣直轄の組織。映画「ドクター・ノオ」でバーナード・リーが「自分がMI7の部長になってから〜」の科白は(字幕ではMI6に変えられている)はあながちミスではなく。差別化を意図したものである。
しかし、ジョン・ガードナーのころから設定の折り合いをつけはじめ、ジョナサン・ケープ社から刊行された初期三部作では、秘密情報部は解散し、ボントはMの子飼いの私兵に設定が変更されたり、後期作品では秘密情報部から外務省に出向という設定に変更されていたりする。
レイモンド・ベンソンの小説では情報公開条例により、秘密情報部は解体。全員MI6に異動という形をとっていたが、「ダイ・アナザー・デイ」ではフレミングの設定にもどし、SISとMI6を別組織と解釈し、フレミングの情報部をSISとしている。さらにフレミングの秘密情報部がユニバーサル貿易をカモフラージュに使っているように、ベンソンのSISはMI6本部のフロアをかりて、MI6事態をSISのカモフラージュに利用している。


映画の方では外務省の建物を秘密情報部の外見に使い始めたが、組織がMI6に変更になったのは「ゴールデンアイ」より。


組織概要
「当時も今もイギリス国防関係各省のこの付属機関」という言い回しのこの組織は、国防省所属、首相直属のMという名の部長によって統括されている。本部に置かれている「課」と海外現地にある「局」によって運営され、その中のOO課に配属されている工作員は、M直属であり、暗殺・破壊行為を手がける。任務遂行上の殺人が許可されているこの課は、情報部内ではエリートとみなされているが、内情はこの手の機関にありがちな、孤児たちを連れ込んできて工作員として育成してい方法が取られているようでもある。極秘の赤い星のついた黒い書類ばさみがでてくるとOO課の出番である。
 リージェント・パークのさびれた灰色の高い建物の8階に情報部の本部が、9階最上階にMの執務室がある。このビルには5つのペーパー・カンパニーが在住している。「株式会社ラジオ各種検査所」「ユニヴァーサル貿易」「デラニー兄弟商会」「オムニアム協会」「管理事務所ミスEトゥイニング」。海外における活動の際には「ユニヴァーサル貿易」のカバーを使うことが多い。60年代中期には「トランスワールド財団」という呼称も使われていた。
国内のセイフ・ハウスはリッチ写真株式会社。セント・マーティンズ・レーンにあるフラットである。
他、確認されてる施設として、逆洗脳や精神療養を行う施設として、保養所と呼ばれているケントの大きな屋敷パーク、ケンジントン・クロイスターズ44番地にある、かつて連邦議会で使われた建物を、尋問用施設としている。

遍歴
70年代末期、情報部で大きな組織改編パージが行われた。財政的な見地によるものである。それによりOO課が廃止され、OO7はいわばMの私兵的な立場となり、便宜上「特別課/スペシャル・サービス」という部署が設けられる。このときのボンドの表向きの担当業務は「特別課の外務省連絡係」ということになっている。
しかしながら、時代はアナリストの予想に反して、テロ・ネットワークの台頭により、90年代はじめにはOO課は復活を遂げる。あたかも戦後解体されSISとなったMI6が復活したように・・・。 この冬の期間、情報部はダミー会社として「トランスワールド貿易」名を使用していた。
秘書たちの制服が自由になったのもこの頃で、かつての、ハロッズかハーヴェニコルに発注した、上はアンサンブルに真珠、下は仕立ての良いスカートという制服も消滅し、カジュアルなジーンズとシャツを身に着けたモデルのような娘たちを見ては、嘆くマイルズ卿であったとか・・・。


さらにソ連崩壊後、情報部は大きな変貌をとげる。
女性のMの就任、そのニュースが大々的にマスコミに報道される。さらにカモフラージュなしのSISビルの建設。そして、1994年のインテリジェンス・サービス条例によって情報部の存在を公式に認めたこと・・・この情報公開によってマイルズ卿の指揮する首相直属の秘密情報部は解散、職員は国防省から外務省勤務に異動辞令がくだる。
ボンド曰く「秘密情報部が、秘密というキーワードを放棄してしまった」ということか。・・・・で、結局のところ秘密情報部はMI6に統廃合されてしまうのであります。いと哀れ。国防省在任中、大佐に昇進したボンド君ではありますが、外務省の「ものさし」だと中佐相当なのだろうか。ボンド君降格。さらに哀れ。 しかしこの、「狙ってください」とばかりの標的ビル。案の定、1999年に爆破テロにあう。それを予期していたかどうか新任Mの「情報部に機動性を持たせる」業務改革の一環で、セイン城に移動本部であるスコットランド支部を設置している。

ダイ・アナザー・デイにおいて、歴代のエージェントがOO7ジェームズ・ボンドのコード・ネームを襲名してきたという設定でリー・タマホリ監督は作品を作っている。小説版オリジナルの設定としては、前任者のQの存在を科白にいれることで、前作でRと呼ばれた男がQに昇格したとほのめかしているが、なによりも、特筆は、ガードナーの頃からあいまいになってきていた秘密情報部の設定について結論を出したことだろう。
フレミングの「海軍省が前身にあたる国防省の中の秘密情報部」が、映画ロケーションによって「陸軍管轄の外務省所属のMI6」に変更されされていたが、今作品においては、本来同一組織である
SISとMI6を異なる二つの組織に別け(本来同一組織でありSISは正式名称、MI6は俗称)、フレミングの秘密情報部をSISとし、MI6のインテリジェント・ビルの一部フロアを借りて、MI6を自分たちの組織のカモムラージュに使っている、リージェント・パークの、国防省の偽装ビルの最上階と次階を借り切っているフレミングのそれと同じにしている。そして秘密情報部を、省の大臣でなく、首相直属の組織に戻している。

OHMSSとMI6の相違点
ボンドの所属は海外情報部となっている。ただしフレミングの原作では、MI6という言葉は一切使われていない。ジョン・ガードナーにおいてはフォークランド戦争においてボンドはMI6に出向し、工作員の教官を勤め、Mついても、必要時にSASの出動命令が出せる等、情報部部長よりワン・ランク高い別格の存在にまで至っており、スパイ活動はSIS、戦時活動はMI6と組織を別けているきらいもある。
この、原作の中に出てくる情報部の組織形態は、実在の海外情報部のものでなく、海軍情報部のチーフ、ゴドフリィ提督の回顧録をもとに提督が築きたかった情報部の組織形態をフレミングが小説の中で再現したのだろう。
おそらく、背景は事実に基づくことによって物語が成り立つとというポリシーがゆえにフレミングはMI6という呼称を使わなかったのかも知れない。
イギリスにおいてスパイ活動の歴史は、1911年に海外でスパイ活動を引き受けるためにに設けられた事からはじる。本当の英国情報部はMI6(Military Intelligence)ではなく、正しくはSIS(Secret Intelligence Service)と呼ばれ、Mセクションの呼び名は第二次世界大戦中の暗号で、戦後は解体され、フィクションの世界で呼び名だけが独り歩きをしていた。フォーランド紛争という「戦時」のため暗号が復活し、1994年に本家の呼び名を乗っ取ったという解釈がおおむね正しいのでは?
SISのトップは「C」という頭文字で呼ばれており、元々第1代情報部部長のマンスフィールド・カミングの名前から来ている。 1994年3月に, SISは2303名のスタッフを持っていると報告され、その本部はテムズ川の南部に、建築家のテリー・ファレルの設計によって建てられた。このSISビルは映画の中でも、実際にゴールデンアイとワールド・イズ・ノット・イナフで姿を表した。
SISはしばしばMI5・・・正しくはSS( Security Service)と間違われることがある。SSは、 1909年に英国の中で防諜を扱うために設立された機関で、 情報部初の女性部長 ステラ・リミントンが就任したのはこのSS(MI5)の方ある。


関連付けされる人物

関連付けされる作戦

kl