はじめに
SPECTRE は the Special Executive for Counterintelligence,
Terrorism, Revenge and Extortion /対敵情報活動・テロ・復讐・強要のための特別機関という名称の略である。
後続の映画、小説によってスペクターは「主要な犯罪組織のほとんどすべてに浸透するだけでは飽き足らず、文明社会におけるほとんどの警察、公安当局、秘密諜報部にまで食い込んでいた」というような、いわば世界制服を企てるフリーメイソン的な伝説が定着しているが、実際は持ち寄った投資で持って利益を追求し、投資額を上回った金額を平等に分配するという集団である。組織の構成は末期を除けば11名から22名のメンバーによる少数だが、それぞれが自らの組織をもち、あるいは所属していた組織の幹部であった経歴があり、利益の追求においてそれらの組織に対し、人材等を利用できる権力を未だ所持しているという人物たちということになる。
その変遷
スペクターはその最高司令官であり議長であるブロフェルドの独得な思想を基盤としている。「情報の収集と操作を支配した者が、世界を制する」それはネット社会が確立した今でこそあたりまえのこととなっているが、当時は特異な思想だった。
相手が欲する情報を入手して売りつける。戦争勃発に関する情報を売買するタータ。終戦に向けての情報を扱ったラヒール。このビジネスでブロフェルドは成功を収め、戦後発足させたスペクターは相手が欲する物の範囲を、情報から行為にまでに広げた。扱う「品物」の拡大にともない、一個人でやっていたタータの頃と違い、共同経営の仲間が必要になり、高地トルコ人の三人と組んで興したラヒールのように、スペクターを興すにあたっても強力なパートナーを必要としていた。ブロフェルド自らが自分の後継者と指名したエミリオ・ラルゴという有能な副官を得ることによってスペクターは産声を上げる。
この副官の存在は、第二期スペクターのイルマ・ブント。ニーナ・ブロフェルドに対するウォルター・ラクソー、タミル・ラハ二に対するサイモンと引き継がれている。このスペクターは大きなビジネスを遂行するための機関で、その訓練もしくは士気の向上、資金の確保の為にハイジャック等小さなビジネスを行っている。
大きなビジネスとして確認されているものとして、ラルゴ指揮のもと、水中翼船ディスコ・ボランテ号を拠点にしたオメガ計画、ラクソー指揮のもと、ビズマーカー牧場を拠点としたハウンド作戦。ラハ二自身が前線に立ったダウン・エスカレーター作戦がある。他にピズ・グロリア峰において、イギリスに細菌戦争を仕掛けるための研究が行われていたが、その目的はについては明らかになっていない。一説によると、これまでの行為に対する特赦、爵位の認定を強要するための準備とも言われているし、オメガ計画を阻止した英国情報部のある、イギリスに対する「復讐」という説もある。

歴代の指導者たち |

関連付けされる作戦 |
1956〜1959
第一期スペクターの本部はパリのオスマン通り136番地Bにあり、レジスタンス・グループに所属していて消息を絶った肉親の安否を調査するFIRCO/圧制に抵抗するための国際友愛会・・・を隠れ蓑にしている。メンバーはブロフェルドと20名で構成されている。オメガ計画のために引き抜いた二人の科学者を除くと3人一組の六カ国のグループから成り立ち、欠員はそれぞれのグループで補充させている。グループは、ウニオーネ・シチリアーナ(シチリア系イタリア・マフィアの幹部)の3人、ユニオン・コルス(コルシカ系フランス人犯罪結社)の3人、元ゲシュタポ別働隊幹部の3人、元スメルシュの3人、中東ヘロインルートの責任者であり元ラヒールの3人、元チトー元帥の秘密警察の3人。ラルゴはどこのグループにも属さない別格となる。21名はそれぞれ番号で呼ばれ、その番号も毎月1日の午前零時に2番づつ進む
各国のグループ構成は以下のとおり
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エルンスト・スダウロ・ブロフェルド(2号) |
スペクター議長 |
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エミリオ・ラルゴ(1号) |
オメガ計画総司令官 |
シチリア班 |
フォンダ(当時4号) |
ペタッキをNATOから引き抜く |
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フィデリオ・スキアッカ |
金塊投下についての準備をした。 |
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??? |
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コルシカ班 |
マリウス・ドミング(7号) |
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ピエール・ボロー(12号) |
誘拐した娘に手をつけてしまった為処刑される |
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??? |
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ドイツ班 |
ブルーノ・バイヤー |
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14号 |
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??? |
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ロシア班 |
ストレリク(10号) |
反逆のためラルゴに射殺される |
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11号 |
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??? |
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トルコ班 |
三名 |
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ユーゴスラビア班 |
三名 |
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科学者班 |
マスロフ(カンジンスキー) |
16メガサイクル無線を扱う |
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コッツェ(5号) |
東ドイツの物理学者 |
あくまでもオリジナルのスペクターのメンバーは22名で、必要な要員は各班が調達、あるいは特定の人物をスカウトするという形をとっている。ファースト・スペクターでは彼らも番号によって管理されている。確認されている人物はこちら。
リッペ伯爵 |
赤雷党の党員。マカオに本拠地をもち中国とつながっている密輸犯罪組織その実態をつかむためにH局は腕ききを二人失っている。療養所で偶然居合わせたボンドと子供っぽい力比べをやってしまったため、オメガ計画を遅延させてしまう。処刑される ドイツ班が雇った男で番号はG。
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52号 |
シチリア班が雇う。身内がブロンテの町のマフィアの首領で、エトナ山に投下された金塊回収の司令を出す任務に就く。 |
201号 |
回収した金塊を資産として処分する任務に就く |
ソーマーズ |
陽気な道楽者。原爆回収班。ラルゴの組織の部下 |
ヴァルガス |
原爆回収班。ラルゴの組織の部下 |
この組織は1000万ドルをイギリス政府から強要するオメガ計画の成功でもって解散するものであったが、強奪された原爆を奪回することを目的とする英国情報部のサンダーボール作戦によって、それぞれの役割をもってバハマに集結した20名のメンバーはラルゴを含めて死亡、もしくは逮捕される。
1961〜1962
第二期のスペクターは情報部の追求を逃れ、ブロフェルドがスイスに亡命した頃から活動を再開する。これまでの財産をつぎ込んでスイス警察から政府に至るまでを買収し、永世中立という要塞でもって身を守ることに成功する。その政治的工作においては、後にブロフェルドの愛人と呼ばれることになるフロイライン・イルマ・ブントの手腕が大きかったものと思われる。英国情報部等がサンダーボール作戦の事後処理に追われている混乱期に乗じてすべての裏工作をすませ、1961年にブロフェルド逮捕のための作戦が発動する頃には次のビジネスの拠点が完成していた。メンバーについては旧スペクター各班の3人の欠員補充という形で引き抜いてきている。しかしイタリア・マフィアのようにスペクターとはすでに接点が消滅した組織もある。
本部はグロリア・クラブという会員制クラブを隠れ蓑にしている。グロリア・クラブは、ド・ブルーヴィル伯爵を名乗るブロフェルドが、ピズ・グロリア峯を買い取り、設立したクラブで、グロリア・アルプス山荘、グロリア・レストラン、赤、黒の二種のゲレンデを持つグロリア・コース、グロリア超特急ボブスレー・コース、アレルギー治療生理学研究所の施設によって成り立っている。生理学研究所ではイギリスに細菌戦争を仕掛ける準備が行われていた。
コルシカ班 |
GI刈りの男 |
ボンド追跡中、メルセデスこど谷から落ちて死亡。 |
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猪首の男 |
ボンド追跡中、メルセデスこど谷から落ちて死亡。 |
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??? |
ボンド追跡中、メルセデスこど谷から落ちて死亡。 |
ドイツ班 |
クルト・ヴォルター・トレイベンか? |
生存 |
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フランツ |
ユニオン・コルスとの銃撃戦で死亡か? |
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??? |
グロリア・クラブ脱出時にボンドに倒される。おそらく再起不能 |
ロシア班 |
イワン |
ボンド追跡中、雪崩に巻き込まれて死亡。 |
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ピーター |
ボンド追跡中、ストックで刺殺される |
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??? |
ボンド追跡中、除雪車に巻き込まれ死亡
プラスティック爆弾の玄人。KGBの手先としてU2機を爆破している |
トルコ班 |
エル・アハティか? |
生存(中東にあるラヒーニの最後のメンバーの可能性あり) |
ユーゴスニビア班 |
バーディル |
アレルギー治療の被験者女性を襲おうとしたため、処刑される |
ブルガリア班 |
ボリス大尉 |
東欧ルートで細菌兵器技術もたらしたか? 銃撃戦で死亡か? |
フランス班 |
フリッツ |
ユニオン・コルスとの銃撃戦で死亡か? |
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パンケット兄か? |
生存 |
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パンケット弟か? |
生存 |
197X〜1981
おそらく第二期スペクターの残党が起こした組織と考えられる。ブロフェルドが極東の小島に隠居してしまったため、活動が停止されていたが、本来スペクターが行っていた活動が求められる時代になったため、再び集まったものと思われる。
巨大なヘッドを失って、今まで対等だった者の中からボスを設けることに対するメンバーの確執も、昔の海賊が死んだキャプテンの娘を女神のように祭り上げて回避していたように、ブロフェルドの血縁が存在したことはスペクターにとって幸運であり、しかもその闇のシンデレラが、独自にビスマーカー夫人という巨大な資本を手に入れていたことは二重の幸運であった。しかしながら、組織の規律・存続において、血縁を持ち出した時点でもう没落の道に踏み出してしまったことは否めない
ビズマーカー機関 |
ニーナ・ビズマーカー(ブロフェルド) |
ブロフェルドの一親等血族 |
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ウォルター・ラクソー |
作戦参謀。ハウンド作戦立案
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マーカス・ビスマーカー |
スペクターにおいては資本と設備、薬品技術を提供 |
本部はミシシッピーの下流にある沼地、水浸しの岸辺にある。廃屋そこは瘴気の立ち昇る緑の沼で死者の亡霊に取り付かれているといわれ、邪悪な守護神と呼ばれる二匹の大ニシキヘビの大蛇とクライトンという聾唖の男が棲みついている。その館の主人は女の魔女だとうわさされている。村人たちはその魔女をティックと呼んでいる。魔女の仲間たちは、つまりスペクター幹部会は10人。毎月その集会に訪れるという。廃屋の外装は魔女伝説を作るためのカモフラージュで内装は贅沢な屋敷である。
スペクター幹部会 |
ドイツ |
クルト・ヴォルター・トレイベン |
西ドイツ暗黒街の領袖。ブリディシュ航空12便ハイジャックを計画する。 |
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スウェーデン |
ビョーン・ユンテン |
一匹狼の情報収集のエキスパート |
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フランス2名 |
パンケット兄弟 |
フランスの犯罪者 |
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ニューヨーク |
クランコウ・スチュアート |
NY犯罪組織の一員にしてフィクサー |
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ニューヨーク |
ドーヴァー・リチャードソン |
NY犯罪組織の一員にしてフィクサー |
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ロス・アンジェルス |
マイクル・マクロウス |
ロス暗黒街の帝王。白髪の温厚そうな紳士 |
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カイロ |
エル・アハティ |
巨漢の会計関係ハンサムな顔と甘い声の持ち主 |
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イギリス2名 |
不明 |
不明 |
この時期の組織形態はブロフェルドの持つ組織とスペクター幹部会との二重構造になっている。ニーナのもつビズマーカー機関の方が、財力・権力ともに旧スペクター残党より上回っていたからだ。後のラハ二の時代もそうだか、スペクター自体はどこかに寄生しないと存続できない、パラサイト・ユニオンに姿を変えてしまっていた。
主な委託契約先 |
エレフォン(傭兵派遣所) |
司令官のラハニ大佐はラハ二・エレクトロニクス会長でもある |
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マザード警備保障会社 |
社長はマイク・マザード。ニューヨークにある。 |
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ノーリッチ国際警備隊 |
女性のみで構成されている警備会社。ナニー・ノーリッチ所長 |
スペクターの幹部会、かつては各国班と呼ばれていた団体は全盛期よりもその力が衰えているのはいなめない。作戦遂行のために調達していた人材もこのころには、他の組織との依頼契約に基づいて行われている。ハウンド作戦遂行時には幹部会はスペクター最高理事会と自らを称し、契約先の組織を世界各国代表諸氏と呼ぶようになる。確かに規模は巨大にはなったが、本来、幹部達自身で調達できていた人材も、他所の力を借りなければならないほどのものになり、スペクター最高理事会は、ニーナ・ブロフェルト亡き後、後継者を決める機関に成り下がってしまう。
1983〜1986
最後のスペクター指揮官であるタミル・ラハニについては、一切の経歴は謎である。推測できる可能性としては、中東、南米を渡り歩いた傭兵で、階級は大佐。この大佐については正式な反政府軍のものかもしれないし、当時ある種のカリスマをもっいた「大佐」にあやかったものかもしれない。傭兵自体の経歴から傭兵キャンプを建設し、テロリスト・キャンプに援助を送っていたソ連と接触した。そのソ連からの援助も含めて、資金をエレクトロニクス産業に投資。コングマリオットの基盤を作る。
ラハニ・グループ |
ラハニ・エレクトロニクス |
ラハニは会長兼大株主 |
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エレフォン |
指令はラハニだが、現場の指揮官はサイモンが勤める |
エレフォンはテロリスト養成キャンプで、ここでは
対テロリスト部隊のイギリスSAS、ドイツのGSG9、フランスのGIGNと同じやり方で訓練されている。ここで育成された兵士達は、1984年にイスラエル機関に突入されて撤退するまで、武力を必要とする組織や政府に人材を派遣していた。ダウン・エスカレーター作戦では、組織のルーディ、アラブ人の若者達が参加している。このエレフォンはスペクターとは対等の雇用関係にあり、ハウンド作戦にもかなりの兵士を派遣していると思われる。
ハウンド作戦で生き延びた最高理事会の決議でラハニが後継者に選ばれたことになるが、スペクターの名前欲しさに、もう組織として機能していないスペクターを抱きかかえで引き取ったという方が正しいかもしれない。おそらくラハニの性格から考えると、スペクターの継承が完了した時点で、最高理事会のメンバーは処分されたものと考えられる。
本部はキーウェストの珊瑚礁外側にあるシャーク島で、1983年にタークィン・レーニー名義で購入した。この島のピラミッドの形をした施設は表向きはSPEC/環境と文明推進協会・・・という団体を名乗っている。島にいるメンバーは35名。しかし、この最後の砦も米軍海兵隊の攻撃で壊滅する。
確認されているスペクターメンバーは以下の通り
ドクター・マッコネル |
ラハニの主治医 |
金髪の男、禿の男 |
ラハニのボディガード |
沈黙の殺し屋 |
背が高くて青白い男 |
スペクターの暗殺者チーム |
五人で標的をマークする。(中年のイギリス人夫婦、学生、少女、ギリシアの若者) |
補足
情報に関する思想とともに、ブロフェルド一族にはもうひとつ確固たる主義があり、「メンバーの一人の弱点は全体の死を意味するもので、全体の団結を乱し内的な力を弱めるような、暗然と規律の問題に対しては死をもって清算する」という一貫した考えをもっている。
その処刑は絶対でもって正しい。初期スペクターにおいては、おもに会議室においてブロフェルド自身が手を下し威厳を確立させていた。処刑されてしまう条件としては、仲間が戦ってるに逃げる。私情で計画に悪影響を与えた。作戦遂行中に対象の女性に手を出す。過信でもって失敗したもので、それ以外については結構寛大(!?)
12フィート離れた席の男 |
空気銃に込めた太い針で心臓を打ち抜かれた |
左隣の男 |
巧みに首にかけた針金の輪で絞め殺した |
ピエール・ボロー |
会議室の仕掛けた電気椅子にて処刑 |
14号 |
ラルゴに射殺される |
バーディル |
ボブスレーコースから突き落とされる |
マーカス・ビスマーカー |
射殺される |
リッペ伯爵 |
車に手榴弾を投げ込まれる |
風間 |
間欠泉かピラニアの池に放り込まれる |
デ・ルンツ |
大ニシキヘビに丸呑みにされる |
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