「甘く、甘酸っぱくなく」

ゼロ・マイナス・テン

はじめに
イギリスの統治権が生きている10日間でボンドは事件を解決しなくてはならない。
映画では「OO7は二度死ぬ」以降の定番のプロットだけど、小説では初の試み。
香港返還と実際の出来事に絡めて現実性を打ち出したのも今回が初めて。
今まで企業を隠れ蓑にの悪党が多かったが、企業そのものが敵のなったのも、これが初めて。

ストーリィ

1997年7月1日英国植民地の香港は、中国に返還される。香港返還まであと10
香港の企業ユーラシア・エンタープライズが絡んだ連続殺人事件は、情報部の関心をひいた。
ロンドンから勧誘員が爆死され、北京からの役員が暗殺される
ギリスでは、ポーツマス・ドックの貨物を調査中の2人の捜査官が撃たれて死んでいた。
そして香港では、爆発で植民地で有名なレストランを貫通して炸裂し、10億ドル出荷のユーラシア・エンタープライズ企業関係者を殺害した。
これは単なる偶然でなく、中国への香港返還の機をねらい何者かが暗躍してしているのではないかと、新任のMは考えた。
Mはボンドを香港に派遣しようとするが、ボンドはオーストリラリアの奥地で起こった核爆発についての調査を望んだ。
しかし、ボンドは香港行きに。調査はユーラシア・エンタープライズの取締役ガイ・サックリーから始まったが、サックリーは車ごと爆破され口を封じられる。
これほどの事をやってのけるのは、中国の秘密結社ドラゴン・ウィング・トングの仕業だとボンドは考え、トング(党)の根城を調べるが捕まってしまう。
トングのリーダー、リー・ウナンは自分達は事件には関係がないと話し、ボンドに取引を持ちかけてきた。
ボンドに中国に行ってもらい、ある書簡を盗んできて欲しいというものだった。

オピウム・ロード

リーは、ボンドに、ユーラシア・エンタープライズとドラゴン・ウィング・トング百年にわたる関係について話した。
それは東部から西へのヘロインの密輸ルートの利権だった。
もともとユーラシアはガイ・サックリーの祖父とリーの祖父が作り上げたへロイン密輸のためのものであり。二人の契約では、このユーラシア・エンタープライズの利権は香港がイギリスから中国に返還されると同時に、サックリー一族からリー一族に譲渡されるものだったのだ。
その契約を署名された書類は現在、唯一コピーだけが存在し、それは中国のウォン・ツカム将軍が持っていた。
ボンドはその取引に応じることになる。本当の黒幕はウォン将軍ではないかと考えたからだ。
道中、娼婦のスンニー・ピーを保護しジェイムズ・ピカードという勧誘員に化けて潜入するが、ウォン将軍に正体を見破られ拷問に掛けられる。
ウォン将軍は自分には動機がないとサックリーの殺害を否定する。
相手の隙をついて反撃に転じたボンドはウォン将軍を倒し、契約書の奪取に成功する。

黒い悪玉

ボンド、そして道中を供にするスンニーはオーストラリアに飛んだ。
それはユーラシア・エンタープライズの倉庫で、オーストラリアの鉱山地図を見つけたからだ。
この鉱山には、死んだはずのガイ・サックリーがいた。
サックリーは自分の死を擬装して、地下に潜伏し、まもなく行われる香港返還セレモニーにあわせ、香港移住時代のころ自分達一族に対して卑劣な扱いをしてきた住民達への復讐をこめて、香港を核爆発で壊滅させようとしていたのだ。
そして、それはユーラシア・エンタープライズの組織的な不正を隠すためにも絶好の機会だった。
ボンドは爆弾を持ち香港に向かうサックリーを追う。
香港返還セレモニーのその日、ボンドはなんとか場所を突き止め爆弾を回収、スンニーを楯にボンドを殺そうとする、サックリーの息の根を止めた。
そして、セレモニーは無事、開催された。

もしかして「トゥモロー・ネバーダイ」の原作?

当初はシリーズ団というテロ組織がドラゴン・ウィング・トングに当る役割だったらしい。
ユーラシア・エンタープライズの取締役の名前がタイパンという名前だった。
プロットも、まず英国のエージェントが暗殺され、それの報復として、北京のエージェントを二人殺して仕返しをする。
さらにその復讐としてユーラシア・エンタープライズの取締役タイパンの爆死。これはもしかして第三者が双方共倒れの英中戦争を仕掛けようとしているのではと、映画ではおなじみの展開でボンド出陣。
で、その黒幕がシリーズ団かと思ったら・・・ちょっとひねりを利かせて、黒幕は死んだはずのタイパン率いるスリー・コネクションという組織。
あと、「シーファイア」のステルス艦をつかって、ミッシェル・ヨーを投入したら・・・
「トゥモロー・ネバー・ライズ」? ダルトンがやったら、こうなってたりして。


kl