「あなただ。あなたがその蜘蛛なんだ」

アリゲーター


はじめに
作者の素顔はマイケル・K・フリースとクリストファー・カーフ。「セサミストリート」の共同製作者です。
パロディというと人物を借りて作品を風刺するやりかた、文体とかを真似て書くもの、お約束な小道具やエッセンスをちりばめるものとある。
それらに加えて、この作品では、大胆にエピソードをそのまんま(オマージュですかい?)とりいれたりもしていて、原作を読んでれば読んでいるほど、面白さを満喫できる構成です。
敵であるアリゲーターは原作のヒューゴ・ドラックスを意識したもので、続くカジノでの決闘は「ムーンレイカー」、そのクライマックスは「カジノ・ロワイヤル」。
アリゲーターのゴージャスなアジトのいきさつや、スメルッシュ依頼を受けての小遣い稼ぎ、拷問に関する思想などは「ドクター・ノオ」、中盤は「死ぬのは奴らだ」の有名なサディズムシーンの満開。
あとフレミングお約束事の日本は、日本の殺人用麻薬ヒロポンという形で登場する。
個人的にツボだったのは、原作の「ムーンレイカー」、映画のノベライズの「私を愛したスパイ」の核爆発を隠すのにやってのけた、史上最大のでっち上げ作戦を今回の事件でやってのけたこどたろう。
信じがたき事件をどうやって世間に隠すかにほんそうするM、原作ファンの肝はここにありというところでしょう。
本編では登場人物の名前は伏字になってます。ジ*イムズ・ボ*ド、*(Mね)作者の名前もイ*ン・フ*ミ*グ(笑)


ストーリィ
ウェストミンスターのセント・スティヴンの地下酒場の常連であるボンドは男3人と女1人に偶然出会い興味を持つ。
女は淡い絹のような根本までの金髪、健康的な印象には似つかわしくない派手な紫のドレスを着ていた。
男の二人のおしの召使たちも紫の服で、主人らしき男、ドイツ系の赤毛の小男もまた紫の革の背広に紫のタイとシャツ。顔色も心臓が悪いのか紫色でだった。
唯一紫でないのものは、彼の口にある鋼鉄の歯だった。
彼の悪癖はそればかりでなく、つねに紫の植物性染料の小さな噴霧缶で所かまわず吹きつけることだった。
彼の名はラーカス・アリゲーター。女性の名はアナグラム・ル・ガリオン。
アナグラムは行きずりのボンドにアリゲーターの元から私を連れて逃げてと、懇願する。
しかし、途中でアリゲーターの起こしうる仕打ちに恐怖に屈して、彼女はアリゲーターの元に戻ってしまう。
翌日、テムズ河にかかる橋がすべて爆破される事件が発生する。
その夜、ボンドはMとブレイズ・クラブに乗り込むことになる。
ドイツ系アメリカ人の大金持ち、アリゲーターのいかさまを暴いてくれというM個人的な頼みを引き受け、ボンドはアリゲーターと「ゴー・フィッシュ」のカード勝負をする。
ボンドは思いっきり椅子ごと後ろに倒れるという、ル・シッフルとの対決の時に使ったテで、アリゲーターのいかさまを見破る。
おしの召使の手話でアリゲーターは相手の手札を読んでいたのだ。眼には眼をでボンドはカードをすり変えるいかさまでアリゲーターに勝つ。
その翌日、ボンドは緊急の任務でバミューダに向かうことになった。
B支局の支局長が何者かに殺されたのだ。秘書の目撃によると、紫のワニに食い殺されたというのだ。
そこでボンドはアリゲータとアナグラムと三度目の再会を果たす。
そして本部よりとんでもない知らせがとどく。イギリスの国会議事堂が盗まれたというのだ。
地下をくぐりテームズ河に浮かんで海に出たという。
そして議事堂内にいた女王陛下、大臣たちともども誘拐され、TOOTH(ザ・オルガニゼイション・オーガナズド・トゥ・ヘル/憎悪のために組織された機関)より犯行声明と身代金の要求があった


黒い悪玉

アメリカに密航した両親が死んだ後、アリゲーターはニュー・ヨーク・シティの下水道に住み込み、下水に棲息している爬虫類・・・小さなペットととして飼われていたものの、ブームが去って捨てられたワニを繁殖させて、動物園に売り、子供のワニは愛玩用に売りさばき人財産をなした。
そのワニはすべて紫色に染められており、自分の所に逃げてくるようにしつけられている。それをまたべ売るのだ。
そして、ワニ革のバックや靴などの商売もはじめ、アメリカの皮革産業を制覇した。
その金で、バミューダ諸島の総督府が売却に出したアイルランド島を買い取り、ビッグ・ベンも再現、国会議事堂そっくりの(ただし紫色に染まっている)邸宅を建てて、外部との交流を立った性格を送っている。
この国会議事堂も浮遊タンクと潮流変更装置をつかってイギリスから強奪したものだった。
これはパラ・フロー作戦といい三年かけて、ウェストミンスター・ホールの地下を掘り、浮遊タンクをつけ・・・・と・・・・。
彼の目的はドイツ第三帝国の復活であり、その尖兵としてTOOTHという集団を統括している。
また、スメルシュとも関係が深く(ほんとドラックス卿でねすな)彼らのために、殺人ワニの繁殖に手がけ、ハインリッヒという最高傑作の人食いワニを育成する。


ピンクのヒロイン
アイルランド人の女プロレスラーとフランス人のプレイ・ボーイの間に生まれる。フランスでイギリスの公務員のような仕事をしているイギリス人を恋人に持つようになる。
実はその恋人ロジャー・エントホイッスルは004でスメルシュに捕まってしまう。
スメルシュからOO4を譲り受けたアリゲーターはアナグラムに近づき、ロジャーを人質に、自分の使用人になるよう強迫する。
その仕事は「女」をつかって男を誘い込み、アリゲーターが飼育する人食いワニたちの餌につれこむことだった。(ヴェスパのようないきさつですね)
彼女はアリゲーターを裏切ってボンドと行動をともにするが、日頃からアリゲーターに催眠術をかけられておりボンドは窮地に陥る。


本日の拷問
白状しないなら、鋼鉄の歯で、がぶり。(後のジョーズ?)
白状しないなら、ハインリッヒ君の餌。
ハインリッヒとの戦いは「ドクター・ノオ」の流れをくんでます。最後の晩餐で騒ぎをおこし、ボンドは武器になりそうな食器を隠し持ちますが(映画版では見つかって取り上げられます)、ここではさらにエスカレート。ひと装備くらい揃えてしまいます。

今度はどういうことになるんです?
「ムーンレイカー」のドーヴァ海峡での核爆発を隠蔽するために、政府が使った口実は、巨大な津波(放射能は?)。「私を愛したスパイ」核ミサイル原潜相打ちもそうだったけれども。
今回の国会議事消失は、敵の攻撃に備えての、晴雨の本拠を移動させるための試運転。紫色は迷彩・・・だ、そうで。


kl