「柔和な者達は地を継ぐ。父親達の血は息子達の上に降り注ぐのだ」

スコーピアスの謎

中期ガードナー・ボンドの佳作。「OO7は二度死ぬ」ばりに感情を剥き出しにしたボンドがいる。
生かして捕らえよの命令にもかかわらず、スコーピアスを追い詰めたボンドは、銃を撃って毒蛇が大量生息する沼地へとスコーピアス追いたて、ボンドのパートナーがそう殺されたように、水面をうめつくす毒蛇の中へスコーピアスを押し込む。目には目をでおなじように死んでいったハリエット・ホーナーの敵を討った。
そしてもう一人パートナーであるジョン・パールマンも、娘を教団から救うためにボンドと行動をともにしたのだか、日英会談の場で、サッチャー・レーガンーともども自爆するよう人間爆弾と化した、娘を射殺しなければならなくなる。
いつになく後味の悪いものではあるがね。

ストーリィ
テムズ川で溺死した若い女の手帳に書いてあったのは、ジェイムズ・ボンドの自宅の電話番号だった。
おりしもその時は、結果いかんでは政権が変わること必至のイギリス議会総選挙と情報部の会計監査時との深刻な時期であった。
娘の名前はエマ・デュプレ。ボンドが付き合っている友人デュプレ夫妻の娘であり、情報部の会計監査に赴いているゴム・キーオ銀行の頭取、シュリヴェナム卿の娘であるトリルビーとも親しい。
エマとトリルビー、二人の共通点は強度のヘロイン中毒であったこと、「柔和な仲間達」という宗教団体のおかげで社会復帰が出来たこと・・・としてふたりともそのまま教団に入信してしまったこと。
その「柔和な仲間達」は表向きは中毒治療センターを設けて慈善事業を行っているもののその教義の実態は、武力行使による革命というもので、カルト教団として西側諸国からマークされていた。
そして教団の主導者ヴァレンタイン教父こそ、数年前まで世界中のテロリスト達に武器を供給し、忽然と消息をたったていたウラジミール・スコーピアスであると正体を突き止めていた。
かくしてSASとの強化訓練で疲労困憊のボンドは、SASのジョンパールマンをボディガードにロンドンに戻った。
スコーピアス逮捕。操作はエマの遺品アヴァン・カルト社のクレジット・カードから始まった。そのカードには特殊なマイクロ・チップが埋め込まれていた。相棒は引き続きSASのパールマン。そしてアヴァン・カルト社で、ボンドはアメリカ国税局の密名を受けて捜査をしていたハリエット・ホーナーとであう。

ハーヴェスト作戦
舞台は殆どがイギリス国内である。それはCOBRAが召集されたからである。それは内閣官房伝達室といういみで、内務省・外務省・MI5・秘密情報部・ロンドン警視庁・国防省の共同作戦を意味しているからだ。
人間爆弾と化した「柔和な仲間達」が総選挙の演説会場に赴き次々と自爆していってる。
そして金融機関のコンピュータに不正アクセスできるアヴァン・カルト・クレジット・カードによって、英国に大恐慌を起こさせようとしている。
スコーピアスの目的はその両方でイギリスを壊滅させることだった。洗脳されている狂信者達はそれを革命、聖戦と理解しているが。教団の本部でスコーピアスは、捕囚となったボンドに対して、ビジネスだと応えている。依頼主は不明。
ただ麻薬治療の過程で洗脳している技術はスコーピアスオリジナルだか、キャッシュ・ディスペンサーから逆にオンラインを操作して株式市場にアクセスできるマイクロチップ入りのアヴァン・カルトのカードにしろ、窓の外にもうひとつ鏡張りの部屋をつくり風景を鏡に映すことによって。窓の外をうつしているトリックにしろ・・・
ブロークンクロー・リーの開発した技術と全く同じ。
もしかしたら、依頼主は中国・・・・


kl