「それにしても、あんなエロ写真のマイクロフィルム1個で、ずいぶんの人が死んだな」
大統領の密使
夢見る60年フリークスと化してしまった第二期小林信彦(研究家談)には興味はない。
唐獅子、オヨヨと小林ワールドを作るの一方で、「虚栄の市」「冬の神話」を出していたころの時代。放送作家、ヒッチコックマガジン編集長、日活ファンで・・・
このオヨヨ大統領シリーズは大掛かりなミステリーのパロディで、ジョブナイル三冊、大人向け四冊、短編一冊、ゲスト1回ってなぐあい。
簡単にプロフィールを紹介すると、オヨヨというのはフランスの俳優の名前から拝借している。トランシルバニアの吸血鬼の末裔・・・と言われている。師匠は怪人20面相。
その実態は、アムステルダムを拠点にする麻薬シンジケートのボスで、世界各国の諜報・警察関係からは、「大統領」とよばれており、香港、台湾等、中国圏からは「総統」という名が定着している。オヨヨ帝国の極東進行のため瀬戸内海の島を買い取り要塞としたが、旧日本軍の秘密兵器の秘密を握る老博士との対決に、島を失い大打撃をこうむる。
オヨヨ大統領の転落はここから始まる。
オヨヨ・コネクションのヘロイン売買では損失を補てんすることができず、組織再建を企て、フォートノックス襲撃ならぬ日銀襲撃を行うが失敗。
そして・・・である。
「大統領の密使」では、キッシー鈴木の子供、通称ボンド少年が登場。少年にとって、父親・・・つまりイギリス人は母を捨てた憎悪の対象となっている。母親が亡くなった後、島を出、サーカス団、スリ集団など密度の濃すぎる修羅場の生活をくぐりぬけてくる。
で、この愛すべき少年は、ガキ特有のしたたかを武器にして、機知とウェットで主人公をサポートしていく。マジで将来が楽しみなガキである。
物語はこんな感じ。
組織再建のために大統領が次に売った手はこうだった。
ベトナム戦争における米国兵の阿片汚染は深刻で、将校クラスになると自ら、軍を使って麻薬の密輸を行う組織も出てきた。
その人員名簿でもって、ペンタゴンを強請るというものだった。
しかし名簿のフィルムを提供した米兵はCIAにより暗殺される。米兵はフィルムを宿泊していた横浜のホテルの聖書のラベルの中に隠していた。
運の悪いことに、後からその部屋に泊まった、深夜放送のDJは盗癖クセでその聖書を持って帰ってしまった。
オヨヨの組織が、血眼になって聖書を奪おうとしている。その事実だけで、巨大なメリットがあるのではと踏んだ裏社会の勢力が聖書奪取に乗り込んでくる。
オヨヨのエージェントは秘密裏に名簿フィルムの回収に成功するが、その成り行きを見て、大統領はひとつの遊びを思いついた。
「人はどこまで噂に踊らされるか」
聖書に隠されているは、ベトナムにおける米軍の大量虐殺の証拠フィルムというデマを流し、乗り込んできたCIA、MI6、マフィアに対して聖書の競売を立ち上げた。
オチは金をはらって、なーんもない(代わりにハードコアのフィルムが入ってるだけの)聖書をMI6が競り勝ってしまうことになる。ああ、大英帝国・・・・
Index
「オヨヨ島の冒険」
「怪人オヨヨ大統領」
「大統領の密使」
「大統領の晩餐」
「秘密指令オヨヨ」
「合言葉はオヨヨ」
「オヨヨ城の秘密」
「オヨヨ大統領の悪夢」
「神野推理氏の華麗な冒険」
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