第三帝国を売った男・ジェームズ・ボンド作戦

はじめに
ビバ! ノビー落合、ハラショー! クライトン。
大英帝国の秘密情報部に対する幻想が、フレミングの海軍時代への幻想が一気に膨らむ一冊。

ハード・カバーでは、著者クライトンの半生記という印象しかなかったんだけど、文庫を見るとまるまるジェームズ・ボンド作戦。
なんか、読めば読むほど、裏「スパイメーカー」、たくみなフィクションの香りがしてるんですけど・・・ねえ。

海軍情報部時代、フレミングに振られた熊のプーさんのコードネームは、フレミングが参加した極秘作戦のセクションでメンバーがすべて「プー横丁」の登場人物の名前が割り当てられていたから、とか。

鳥類学者ジェームズ・ボンドの名前は、その極秘作戦に参加するために秘密裏に出張先から英国入りする途中で買った本からだとか。

ナチスの隠し資本の追及でスイス銀行と渡り合った末、ナチスが貯蓄しているインゴットを見せてもうフレミング・・・後の「オクトパシー」のアイディアもとになるような・・・

ゴドフリー少将が統括する海軍情報部所属のフレミングが転属となる、内務省のMI5でもなく外務省のMI6でもない、首相直轄の極秘機関Mセクション。その組織形態からインテリアにいたるまでのフレミング小説に忠実な描写・・・

替え玉を作るために、架空の部隊、通称「レッド・インディアン」を創設、部隊の隊長である「イートン大出身のジェイムズ・ボンド」の経歴と、女癖と影武者役を、フレミング自ら「ボンド中佐」演じたとか・・・。
「ボンド中佐」に成りすましたフレミングが、マルティン・ボルマン誘拐作戦の指揮をとりドイツに乗り込んでいくとか。

このツボつきまくりの記述は、何らかの意図をもった作戦を遂行するための作為すら感じる(笑)
とにかく事実といえるのは、ナチスの高官を誘拐する作戦にフレミングが参加していたということか?

どのくらいかかわってたか・・・現地で指揮をとったらこの本、実戦までしちっゃたら「スパイメーカー」
誰がターゲットか・・・さるナチス高官なら「スパイメーカー」。マルティン・ボルマンだったら、この本。

でも、ヒトラーほどの人間が、戦時押収した金・宝石・証券・美術品のすべてを1人の人間にあずけるのかなあ?
それが唯一の疑問。

それと、ここで書かれたフレミングのコードが「熊のプーさん」、「ジェームズ・ボンド」ほ名乗って仕事をしたというのが、史実にされてしまったことか、唯一の功罪。

ストーリィ
ヒトラーの側近、総統官房長、マルティン・ボルマンは、ベルリン陥落の前夜、忽然と姿を消した。以降、その消息についての噂は後を絶たない・・・・・・1945年5月1日の深夜、ベルリンのヴァイデンダム橋で死亡。あるいは、逃亡地の南米で余生をまっとうした・・・・・・。公式には、1946年10月、ニュールンベルク裁判で死刑判決が下され、1973年にはフランクフルトの法廷で死亡宣告がなされている。

だが、「真実」は・・・・・・。
ソ連軍、連合軍による砲撃の只中、イアン・フレミングが率いる英特殊部隊がボルマンを拉致し、英国に連行。
著者は、その現場指揮官であった。作戦名は「ジェームズ・ボンド」。

目的は、ナチスの金庫番であったボルマンから、その財宝の在処を聞きだすことである。
作戦の立案者は、極秘諜報機関<M>の長デズモンド・モートン。ウィンストン・チャーチル首相もこれを承認していた。
1954年10月付の著者に宛てた手紙で、チャーチルは「(自分の)死後、この話の公表を許可する」と述べている。

消息が全くわからないままに欠席裁判で死刑判決を受けたマルティン・ボルマンは、イギリスへ誘拐されてナチスの隠し財産の情報を明かした。現存する資料とは食違う部分も多数存在するが、それは後日書き替えられた情報が存在するからである。



kl