「根性と場数。それに体力と、冷酷無比な貴族の心か・・・」
Mは二度泣く
はじめに
小松左京のパロディ。平井和正でオトしてどーすんだっっとは思うけど。
パロディとは粋なアソビなんだと思わせてくれます。
Mを目を通したアイロニーが、一見、中傷と思われがちな物語を作品への愛情表現へと昇華させているものです。
原作に出てくるヤクザ組織、黒竜会のモデルは緑竜会といい、太平洋戦争時に生まれた、オカルト的な伝説のある密教系秘密結社です。
ストーリィ
東京。「探偵事務所」と名乗る事務所に、日本人らしからぬ日本人がいた。
名前は「車」と書いて略字として「轟」と読ませている。
その日本人が「彼」なのか。「彼」だったらイギリスに送還する任務を時輪親兵衛は受けていた。
左手の小指は完全だったか。
手の甲に植皮の後があるか。
眼はコンタクトか?
どれも該当しなかった。
しかし、絶対に「彼」だと判断した。
40年前ジャマイカの任務以降失踪したジェイムズ・ボンドに。
車には「ジャイムズ・ボンド」の記憶はなかった。T・田中を崇拝し、共産主義を憎悪するよう洗脳されていた。
そしてT・田中の尖兵として戦うだけの。「OO8」と自らを呼ぶフランケンシュタインの怪物と化していた。
年老いたMは連行された車がボンドかどうか首実検のために昔の秘書たちとともに、出頭を命じられた。
サイボークと化したボンドは年をとらない40年前の姿のままだった。
かつて身を切るような思いで、死地に送りださなくてはならなかった部下が、完全な消耗品の兵器となって目の前にいることにMは涙する。
そして、組織の都合で目の前で破壊されてしまったボンドに対し、Mは再度、泣いた。
「この狂った怪物は、私の知っているボンドではない」と。
T・田中の組織の殺人専門家は、英国人でなく、哀れなサイボーグに過ぎなかったと・・・
・・・・が!
時輪親兵衛はこのサイボークの遺体を貰い受け、アンドロイド手術を施し、先日亡くなった警視庁特捜課7人目の刑事の意識を電子頭脳にコピーした。
名も「車」から「東」に
そしてコード・ネームも「OO8」から「8マン」に!
恐るべきT・田中機関!
T・田中か脳溢血で亡くなるまで暗躍した機関。
黒竜会の隠れたボスでもあったのだか、ブロフェルドに勢力を奪われ、失地回復にやっきになっていた。
そこに殺人機械として申し分ない素材と再会することになった。ジェイムズ・ボンドだ。
息子がいると知らされ日本に向かったボンドはソ連に捕まり、連行されたナホトカから脱出するも、殺されてしまう。
ウラジオストックの赤軍刑務所でばらばらにされた体を回収し、冷凍船で密かに持ち帰り、サイボーグとして蘇生させた。
殺人の正当性する意識だけを残すため、OOをのこすが、OO7の記憶は消さなければならないのでOO8とした。
しかし国際情勢の変化に乗り切れず、果ては狂信者として公安調査庁もクビになり、その矛先はロシア人と中国人に向けられ、テロと国際陰謀の組織に変貌する。
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