「静かなイギリス人ってとこだな。恐れを知らず感動を恐れるか。だが俺はこの男に惚れたぞ」
危険
ストーリィ
ロニー・ヴァレンスは確かに内外問わずその信望は厚い。しかしそのしたたかぶりはMに引けを取らないものかもしれない。元来、Mは本来の任務以外に情報部や情報部員を使う事を嫌っていた。確かに国外をまたにかけているものの、本来警察の仕事である密輸ルートの捜査を引き受けなければならないのか? しかし政治的駆け引きに20年の修羅場を潜り抜けてきたヴァレンスの手練手管に、四たびMは陥落する。ムーンレイカー事件、ダイヤモンド密輸ルート壊滅、コロンビア麻薬ルート壊滅に続く今度の依頼は地中海を舞台にしたヘロイン密輸ルートである。
今回の捜査には珍しくCIAのアレン・ダレス長官が協力をしてくれた。CIAが情報提供者として利用しているクリスタトフを紹介してくれたのだ。同業者になりすましたボンドはクリスタトフに接触、彼を足がかりにして密売組織に潜入を試みる。
クリスタトフは組織のボスはコロンボという男だと告げる。
しかしボンドはコロンボの愛人であるリスム・バウムの巧妙な誘いに乗り、コロンボの襲撃を受けて船の中に拉致されてしまう。
そこで真実を聞かされる。本当の組織のボスはクリスタトフで。自分の周辺がきな臭くなってきたことに対して、以前小競り合いがあったコロンボの組織に濡れ衣を着せることによって回避しようとしていたのだ。
白っぽいヒーロー
本名エンリコ・コロンボ。ハトというあだ名で呼ばれている。陽気で贅沢で人生に張りを持っている男というのがボンドから見た印象で、苦労があると食わずにはいられない性格。確かに犯罪生活かもしれない。警官に追われ、税関に追われ、大蔵省に追われ、煙草の専売法に戦いを挑む。だがそれを子供っぽい悪党ごっこぶりに見せてしまう。そんな雰囲気がある。
そんなコロンボに好意を持ったボンドはコロンボを信じ、共同戦線を張る。
ボンドたちを乗せた船は、クリスタトフがヘロインの取引を行う港に向かっていた。クリスタロフらに一泡吹かせてやろうというものだ。
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