「再突入でしょう」
OO7とムーンレイカー
アテンション!!
この小説において、わが国の国民的英雄ヒューゴ・ドラックス卿と、彼がイギリスにもたらした大偉業であるムーンレイカーを貶める記述がなされていることに対して、我々は遺憾の意を持っている事実を明らかにいたします。
ムーンレイカーにまつわる悲劇について、過去現在においても様々な憶測による噂や中傷がなされている事実に関して、我々は、これらの根も葉もないものに対して、臆病に反応することによって更なる混乱をまねき、個人の名誉を著しく傷つけることがないよう努めてまいりました。
しかしながら、彼の実名を挙げて、彼が何の根拠もない陳腐な空想科学小説の中の、人類滅亡をたくらむ、黙示録の獣のような人物に描かれた事実については、厳重な抗議に値するものと判断せざるを得ないものです。ましてや名誉あるムーンレイカーの名称が外国の宇宙運搬機の名前に使われてしまっていることすら、由々しきことであります。
このような国民的屈辱は、かつて聖マルタ聖ジョージア勲章を受勲した海軍特務中佐を中傷した低俗小説の出現以来のものであり、しかるべき手段を、作者及び映像化した映画会社に対し行うべきであると提案いたしたい所存です。
ストーリィ
アメリカ政府から借用されたスペース・シャトル「ムーンレイカー号」がイギリス空輸中に運搬に使用したボーイング747とともに消滅した。ジャンボ機の残骸はあるがシャトルの残骸がないことから何者かに強奪されたと判断、ボンドはその誰が何のためにシャトルを強奪したのか調査の任務につく。
調査の出発点は、シャトルの製造元である、ドラックス産業があるカリフォルニアのモハブ砂漠。調査を進めていくうちにボンドは、ドラックス自身に疑惑を抱き始める。
黒い悪玉
このドラックスはアメリカのスペース・シャトル計画に独占的援助を与えている人物で英国の国防大臣とも親しく、フランスからカリフォルニアに持ちだしたレンガによる城にアンティックな装飾の中ですごしている。
ドラックスはカール・ストロンバークと同様に、人類の廃頽に憂いを持ち、一度、人類を死滅させて、選ばれた新人類による新世界の構築を夢見ている。その人類が滅亡する間の一時的な生存圏をストロンバークは海底都市に求めたのに対して、ドラックスは宇宙都市にもとめた。その搬送用のシャトルが一機、故障ししたため、埋め合わせのため、イギリスに空輸中のムーンレイカー6号を奪ったのだ。ドラックスの発進基地はブラジルの熱帯雨林の中にある。そこには人類を滅ぼす神経ガスの原料である珍しい蘭の花が棲息している。ここで、またしても新人類の祖先にジョーズがノミネートされてしまう!! ボンドによって用心棒のチャンを失った代わりではあるものの・・・ジョーズの新人類試験合格理由はやはり超人過ぎる肉体か!? ジョーズはボンド抹殺にやっきになるが、最中に知り合った少女ドリーと恋に落ち、ともに新世界で暮らそうとドリー宇宙都市に密航させるが、ドラックスにドリーは「新人類の規格に合わないから殺せ」と命令されたことにより、ボンドの味方につく。人類最強の男を敵にして勝てると思ったのか、ドラックス!?
ドラックスの野望は潰え、ジョーズとドリーはアメリカ軍のスペース・シャトルに救出される。では、シャーリー・バッシーのエンディングをどうぞ。
ピンクのヒロイン
ホリー・グッドヘッド
宇宙コンサルタントとしてNASAから派遣された博士であり、宇宙飛行飛行士でもある。
その正体はCIAのエージェント。おそらく天然ボケだろう。ボンドに自分がCIA要員だと納得させるのに苦労する。でも彼女は博士なのである。その知識・能力・実力を証明するのは宇宙に上がってからであった。
任務終了後、人類初の無重力ランデヴゥーを体験する。どこの国でも秘密情報部員の報酬はコレなのか、「ジェイムズ、もう一回、地球を一回りさせて」とまあ、ごほうび頂戴おねだりホーリー♪
しかしながらQ課の最高機密である「どこまでもボンドを追跡してライブ中継する」スーパー・テクノロジーは絶好調で、大気圏突入前の濃厚なラヴ・シーンは本部の大画面で実況生中継。
英米初のスカイ・ラヴ実験を目の前に・・・
「何をしてるんだ?」グレイ国防大臣の問いに、Qは一言、
「再突入を試みているのでは」
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