世界をまたに恋と殺しのOO7号

はじめに
早川書房エラリー・クイーン・ミステリー・マガジン(現ミステリー・マガジン)のボンド特集の中の一編。
作者不詳。編集者か?

ストーリィ
2月5日
ウィンストン・チャーチルの死により、各国のスパイ組織はチャーチル卿に敬意を表し、1カ月間休戦の契約を結んだ。
それにはあのソ連も参加していた。
その結果ジェイムズ・ボンドにも一週間の休暇が与えられることになり、「私」こと日本人がボンドの休暇旅行に随伴することになる。
「この道に入ったのは19歳の時で、冒険心と愛国心からでした。そのうちそんな気持ちはほとんどなくなり、ぬけるにも抜けられなくなってしまいました。本能的なもの。人間の理性もおよばない私の野獣性がそうさせるのかもしれません」
作者は。思索型の人間としてボンドを捕らえている。
2月6日
ゴルフで汗を流してから、モナコのカジノへ。
「賭け事は相手を見ること。つきを逃さないこと。賭けを降りる潮時を見極めることが大切です。これは人生にもあてはまりませんか?」
・・・とボンドから「私」は教えを乞う。
2月7日
カジノに集まる貴族達を指し「カジノのPRに利用されているだけでコール・ガールと変らない」と説き、人生は無常であると感想を述べている。
その午後、ベントレーでマルセイユへ。
例のごとく女に抜かれて血が騒ぐ。140キロのデット・ヒートのすえ、女は違う道へ。
「あれだけの運転ができる女は、きっと美人で、すべてにおいて素晴らしい女に違いありません」と述べ、「今の女とはきっと別のところで会えますよ」と予言してしまう。
トレーシーの思い出がふとよぎるのも抜かりありません。
マルセイユではF支局のエージェントと、フランスとアルジェリアの情報部の動向についてミーティング。
曰く「敵国のスパイよりも、味方のスパイ組織の方が危険だ」
2月8日
ジャマイカへ。カニ・・・じゃなくてビキニの娘とたわむれる。
「女なんて所詮は慰めのためのものさ。この世界では邪魔になるだけのものだからね」・・・といいつつ「神様は素晴らしいものをつくってくれた。女性がいなければ世界はとっくに滅びていたからね」
これは「私」が女性について話してくれと聞かれたときの、ボンドの返答。
2月9日
ニュー・ヨークに。この大地との接点のない無国籍な街の印象をこう語る。
「ニューヨークは吸収するだけ吸収しながら、全然、相手を受け付けない。拒否するところがある」・・・と。
2月10日
香港へ向かう飛行機の中、同じ希有渦中のロシアの優秀なスパイと歓談する。
ボンドは個人は主義よりも価値があるという思想を持っているらしい。
「愉快なおとこだ。しかし、今度、会ったときはどうなることか」
2月11日
香港を絶賛。
「活気があって刺激があり少し金があればなんでも手に入れられる。男の天国ですよ。中共の隣合わせになっていながら戦争の危機が殆ど感じられないところです。景色よし、女よし、言うことなしです」
その言うことなしの街で二人の強盗に襲われるものの、PPKで返り討ち。
「この世界ではいつも最悪の事態を考え、手加減することは出来ないのです」
そのあと、古銭商めぐりをする。
宝石店で、マルセイユでデットヒートを繰り広げた女性と再会する。意気投合して、ふたり手を取り合ってパリへ。
「私」、置いてきぼり・・・。


kl