ミソの巣劇場 2008/9/4


イアン・フレミング極秘文書 (小学館文庫 シ 3-1)


・・・というわけで 偽書「プロプナンス」の元ネタのミッチ・シルヴァーさんの小説「イァン・フレミング極秘文書」でございます。
しかしよく小学館が出したよね。学研のヤングボンドもそうだけど、以外過ぎる。
民間人がスパイになってく過程というと、あの有名なノンフィクションがありますね。ウォルフガング・ロッツさん。「スパイのためのハンドブック」と「シャンペン・スパイ」どちらも早川ミステリー文庫より。ユダヤ人なんだけどその名前や風貌からドイツ人として通るとモサドに眼をつけられ、中東の社交界で派手に活躍してイスラエルに情報を提供し続けた回顧録です。機会がありましたら一読どうぞ。

さて、本書なんだけれど、とにかくフレミングの原稿の方も、本編も、後半に入るまでちょっとしんどい。主人公終始原稿読んでるだけだしね。王室のスキャンダルに関わったフレミングの回顧録もフレミングさん全然活躍してないし。実際の回顧録の方では、王子と離婚暦のある女性との結婚を阻止するために、フレミングにチャーチルは王子の恋人を「寝取って、別れさせろ」と命令されるのだけども、浮気相手ににはなれたが、説得できず。
けど・・・、
チャーチルたちの本当の目的はかつてプリンス・オブ・ウェールズと称された英国国王を王位から退かせるコトであり、別れ話をちらつかせれば国を捨ててまで女を追うだろうとの思惑通りウィンザー公は退位し、女をとった。何故、国王を退位させなければならなかったか。それはウィンザー公がアドルフ・ヒトラーを心酔し、ヒトラーがロシアを征服した暁には、英国領もヒトラーに捧げてもいいと、国王がそれを書簡にしたためヒトラー総統に送っているからである。
その手紙は半分に裂かれ、交渉の切り札としてその片方を持って、英国との和平を単独で結ぼうとしたルドルフ・ヘス副総統は逆に英国に捕らえられ、その場に居合わせたフレミングはウィンザー公の手紙の存在を知る。

二つに裂かれた手紙の右破片はチャーチルによって処分され歴史の闇に消えた。それを持つものから国家が脅迫されないためにである。そして戦後フレミングの好奇心は残る左破片を追跡することになる。そして左破片までにたどり着いた経緯を回顧録に記し、左破片の原本とともに後世に託した。
国王自らが国をナチスに売り渡す確約書が表沙汰になれば王室及び国家存亡の危機になるだろう。それは国を脅す切り札になるからだ。

なんか今進行中の某文学賞受賞作家のガンダム小説みたいですね。
なんとかの箱の中身でもって某財団が連邦政府から多大なる恩恵と優遇を受けてきた。さてその中身はとなると。。。
不平を言わずに宇宙に移民をしてくれたら、ちゃんと独立国家として認めてあげるからさ。国作っていいからじゃんじゃん宇宙に移民してくれよという、連邦政府重鎮達の確約書というわけですね箱の中身は。
でも、連邦はずっと約束を不履行していたわけですね。そこでそれが明るみにでたら連邦としては立場がないわけですね。
・・と、箱の中身を予想してるんですよ。なんとか憲章って名前も出てきてるしね。
なんかさ、それがビンゴだったら、いかにも小説家が考えたガンダムだよね。
たぶん、著者の心の中では、鼻高々のマクガフィン・・・正体がはっきりしてるのは赤い鰊とは言わないか・・鼻高々の設定とおもってるんだけど、例えば天一坊の御落胤書とか、長七郎江戸日記見たいなレベルだったらまだリアリティがあるんだけどね。
はたして誰が書いたかわかんなくなってるような100年前の空約束文書や、五十年前の国王の背信を証明してるっぽい手紙なんぞ、それが本物かどうかも定かでなくなってるのに、金払うと思う? それは偽物だって言い張れば終わっちゃうでしょ。多分そう思うであろう読者との温度差は発生すると思う。
でもそれじゃ歴史のifの楽しみなくなったゃうジャン。
だから、この「フレミング極秘文書」の著者は後半になるまで、後半になっても歯切れが悪い。多分。なんでこんな50年前の原稿に、小説家のたわごとに、国家権力が振り回されるのって疑問がある。
国王の恋人から退位するよう王を説得させる作戦も、フレミングのジゴロ能力は役にたたず、説得させたら多額の報酬をやろうという金の力が物言った結末だったりね。イギリスのスエズ運河撤退をはじめとする対ソ連の不可思議な行動も、在英のソ連のスパイからクレムリンにもたらされた左破片を使った脅迫を思わせといて・・・
実はアメリカの陰謀だったと落とす。
いやいやなんとも。
著者はこの手の脅迫が通用する条件をフレミングの口から言わせてるんですね。原本があること、原本に対する権威者の証明があること、脅して不利益が生じる当事者がいること、ソレが脅迫が成立する三条件と。ね。
左破片を手に入れた男、フレミングの同僚でソ連のスパイに寝返った、同性愛事件にもキム・フィルビーのプロフューモ・スキャンダルにもかかわったその男は、左破片でもって政府を強請ろうとした。
しかし、当事者である保守党は総選挙で破れ、政権交代した労働党はガン無視。逆に彼をソ連スパイと告発する。
次にもう一方の当事者である王室を原本で脅すも、本気にされない。
そんな中でフレミングが彼にたどりつき、原本を奪取することに成功する。
そのあとの2人のやり取りは絶品ですね。切ないですよね。
あと、その直前のフレミングとチャーチルとのやり取りとか、ウィンザー公婦人との再会とかもね。切ない。でも老人は老獪。
チャーチルの言う「あの旅行記」というのは「oo7は二度死ぬ」なんでしょうね。きっと。
同性愛事件とキム・フィルビーのプロフィーモ・スキャンダルは「黄金の銃を持つ男」の冒頭でこの一件が解決したら辞職するんだとMに言わしめたヤツですね。情報部内の同性愛者による機密漏洩の問題と、ソ連のスパイのコール・ガール、キム・フィルビーにぞっこんになったプロフューモ国防相から機密ただ漏れになって、KGBはその情報から英国人スパイの粛清を開始、その報復にダブル・オー総動員。ライセンス・トゥ・キルが狂い咲き。
ボンドその頃、日本で記憶喪失・・・
「マニペニーの日記」でもキム・フィルビー出てきますね。ベルリンの壁の向こうで敵対するんですよね。マニペニーと。
ただそこで、本文には記されてないけれど、フレミングのファンには、はっとなる歴史のifが浮上してくるんですね。ここで。
王室という当事者、左破片の原本。フレミングという権威ある証言者
条件がすべてそろった。
そして、その年フレミングはなぜか「心臓発作」で「不慮の死」をとげている事実。
「黄金の銃を持つ男」の校正中にですよね。
んふふ。消されたなんて、いってないお。
でもエイミーの命が狙われたのは? 当時の王室の、不利益を被る当事者はもう亡くなってるわけでしょ、権威のある証言者が記した記録と原本はあるけど。
原本を確認して、それが真実だと知り、当事者になった人が王室にいるわけ。
原本に指紋が発見されたフィリップ王子か。
フィリップ王子が確認しているということは、当然妻である現在の女王陛下も確認しているわけですよ。これで半世紀を経て条件がそろったわけ
じゃあ、あの電話は女王陛下直々ご命令な訳だったのですね。
原稿と原本を奪取せよ、それが不可能ならば、持ち主を消せとな。
しかし、遠回し遠回しに言うよね
同人だったにエリザベス女王って言い切っちゃうよね。
ダイアナ妃の事件も、本当は同乗者を狙ったなんてはぐらかさないで、本人狙った。女王陛下の命令でって言い切っちゃうよね。
同人ならね。ともかく、女王陛下の号令のもと、スコットランドヤードから秘密情報部まで総動員。そう、伝説の・・・
プロデューサーさんCOBRAですよ! COBRA!!
ボンド・シリーズでおなじみのCOBRAが召集されたんですよ。しかも勅命で。
COBRA、それは内閣官房伝達室といい、内務省・外務省・MI5・秘密情報部・ロンドン警視庁・国防省の共同作戦を意味している。過去にこれが召集されたのはサンダーボール作戦時とハーヴェスト作戦時である。
エミリーよく生き残った。
まあエミリーに接したスコットランドヤードの人があまりにもスコットランドヤードだったことと、最後にジェイムズ・ボンドがおいしいところ総取りしていったからかな。
アレ、アノ人、ジェイムズ・ボンドですか。
あのシュチエーション、そして彼の行為を決定付ける行動理念は、フレミングの短編とかで強調されてるジェイムズ・ボンドの行動理念でしょう。あれは著者がイメージする原作のジェイムズ・ボンドでしょうね。きっと。
45秒の通信の後、きっと「ベルリン脱出」みたいなやり取りがあるんでしょうね。
「リビングデイライツ」ね。

1997年8月30日の深夜。ダイアナ元妃は交通事故死を遂げる。
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うわー、蔵に入れていたら削除されてた。。。
イアン・フレミング極秘文書 (小学館文庫 シ 3-1) 読んだ後だとやたら王室英国政府の陰謀だっておもうわなあ。
記事自体は、ダイアナ妃の不測の事故死には「ジェイムズ・ボンド」も関わっていたというもので。十年前のダイアナ妃の誌については現在も多く謎が残されていて、それらについてはちょっとこちらを参照してね。
現代メディア・フォーラム ダイアナ事故死10年の真実、加熱した英国のメディア
 当時、ダイアナ元妃の乗った車を追いかけていた「パパラッチ」と呼ばれるカメラマンたちが、事故を誘発したと世界中から激しい非難を浴びました。しかし、その後、ドライバーの飲酒運転が明らかになり、様々な陰謀説も飛び交って、結局、事故の真相については今も見方が分かれています。番組では原点に戻り、カメラマンや目撃者の証言から事故直後の状況を再検証するのが狙いだったようです。BBCによれば、380万人が番組を視聴したそうです。

この事故については現在も、色々な証拠や憶測が飛び交ってはいて、「イァン・フレミング極秘文書」の作者はMI6暗殺説に対してダイアナ妃ではなくて、恋人のアルフレッド氏の暗殺が真相だったとしていたりね。
ダイアナ妃は武器商人であるモハメド・アルファイドの息子と交際していました。そしてイギリスの新聞「インデペンデント」は2003年12月21日付けの記事で、事故当時にダイアナが妊娠していた可能性を示唆している。ダイアナ妃がイスラム教徒の子どもを生むかもしれない、そして結婚によって彼女自身もイスラム教徒になるかもしれないことに危機感を抱いたイギリス王室が、MI6を使ってダイアナを暗殺した――。

あ。MI6→ジェイムズ・ボンドじゃないからね。もう少しお付き合いを。

ITmedia +D LifeStyle:ダイアナ事故死、その時、女王は!?――「クィーン」
1997年8月30日の深夜。ダイアナ元皇太子妃と恋人のアルファイド氏の乗った車は、パパラッチとの激しいカーチェイスの末に大破し、2人は交通事故死を遂げる。チャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)との離婚後、民間人となった彼女の死に対してイギリス王室ができることは何もない。彼女の死に口を閉ざすエリザベス女王(ヘレン・ミレン)に、国民は不信感を募らせていく。
 この空気をいち早く察したのは、当時首相になったばかりの若きトニー・ブレア(マイケル・シーン)だった。王室と民衆の橋渡しをしようと奔走するブレア首相。だが、女王は彼の進言も聞かず、孤立を深めていく。
こういったドラマも作られるくらい。

ダイアナ元妃死因、運転手の飲酒とパパラッチの追跡 陪審評決 AFPBB News
この事件については今年、2008年4月7日死亡から10年以上が過ぎて、ようやく結論が出されたわけで、ダイアナ元妃の死因を究明する審問には、250人以上の証人が出廷、 6ヶ月間にわたって本格審理が進められて、7日、陪審員は「事故死」とする評決を出しました。

で、事の発端はスピード違反をして急ぐ、ダイアナ妃の車を追跡したパパラッチの車とのカー・チェイスだったんだけれど、なんでダイアナ妃は急いでいたのかというところが今日まであまり明らかにされてなく、飛行機に間に合わなくなるからフランスの空港に急いでいた。翌日の英国でのイベントに間に合わなくなるから急いでた。何のイベント? 福祉事業のイベントで、福祉に理解のあるプロデューサーのしかも自分が子供の頃から好きな映画作品の撮影現場を訪問するイベントだったから。何の映画の撮影現場の訪問なの? 今、パインウッド・スタジオで撮影中の「トゥモロー・ネバーダイ」の現場にお邪魔するの。

そのイベントの関する証人喚問のためにバーバラ・ブロッコリさんが法廷に立つ筈だったが、「慰めの報酬」クランク・インの日にちが急遽変更したため、それが出廷日と重なってしまったため、代理人をたてて回避したというもの。

ダイアナ妃というとねー、
チュットだけ再掲↓
CNN.co.jp 007最新作、ロンドンで世界プレミア 英女王も出席 ?
新作「007」のプレミア試写会、エリザベス女王も登場 -
>また、ダイアナ元皇太子妃とともにパリで事故死したドディ・アルファイド氏の父、モハメド・アルファイド氏の姿もあった。
追加の一文が重かったり。ふと「リビングデイライツ」プレミアでのあの場面を思い返して
この時、もうすでに二人はアレだったいう
当時は微笑ましい1コマだったのに、今見るとすごく渦巻く愛憎。
飴ガラスに興味を持った人は行ってみるといいよ。