「戦いは勝利して後も、さらに戦うべし」
ダイ・アナザー・デイ
はじめに
このノベライゼーションを最期にベンソンを休筆宣言をします。(正確にはThe man with the red tatooの推敲時に)今やフレミング財団の副理事でもあり、他のさまざまな仕事の兼ね合いもあり執筆に専念することは出来ないからとか何とか。。。
さすがに長編、短編、ノベライズの10冊分に値する位の作品を年一作、映画の年は二作書き続けてきたから、枯渇したアイデアの充電期間がほしいとか、出版の版権をもつところが欲している需要と、ベンソンが提供したいところの供給の間の温度差が広がった果てとも噂はもろもろだけれども、わてくしとしては、フレミングがやってきたシリーズ展開を一通りなぞり終わったので、もうやることはやりました。満足です。ってーのが本音かなあ、と。
ベンソン復帰があるかないかは今のところは不明だけれども、ノベライズは商売になるので、誰かが書くだろう。その誰がかくかによって、今後は変わってくるかも知れない。
その最期の集大成なのかかなり質の良い作品に仕上がっている。原作の「ムーンレイカー」活用しているせいか、悪役の生い立ちも、これまでのお約束ですからとりあえず書きましたという過去の作品とは違い、かなりの説得力のある描写になっている。アクション・シーンは、無理に絵を文字に起こすことやめて、描写・解説なしの最小限の説明のみでカットしたのは正解だろう。
より映画より詳しくのノベライズではあるけれど、ただ、何故イギリス管轄外にの北朝鮮にボンドが派遣されなくてはならなかったか、(ムーン将軍の真意とは別に)北朝鮮軍が14ヶ月をかけて拷問してまで何を聞き出したかったのか、そこまでは明記されてはいないし、ムーンとクレイヴスが同一人物であると確信した根拠も明記されていない。
ストーリィ
パクチョン・ビーチの任務。それは「血のダイアモンド」と呼ばれる、国連が輸出を禁じているアフリカの紛争地帯産のダイヤモンドで兵器の売買を行っている北朝鮮軍ムーン大佐の暗殺だった。韓国・米国・英国の合同ミッションはムーンの腹心ザオにもたらされた「密告」によってボンドたちの正体がばれ、多大な犠牲を払うことになる。軍用ホバークラフトごとムーン大佐にを滝つぼに落としたボンドは、駆けつけた大佐の父親であるムーン将軍に捕縛される。
14ヶ月後、捕虜交換としてボンドは釈放される。しかしそれは北朝鮮内にいるCIAのエージェントが、ボンドの自白により身元が割れ処刑されたことに対する、予防措置としての苦肉の策であった。
見覚えのない嫌疑に、身の潔白を晴らそうとボンドは西側の隔離施設から脱走する。自分と交換されたザオが真相を掴んでいると考えるボンドは昔のツテをつかって、香港、キューバへとたどり着く。韓国での中国要人に対するテロで身元が割れてしまったザオはそこで遺伝治療をうけていた。
DNAが記憶されている脊髄の石版を拭き取り、そこにドナーから採取した新しいDNAを導入し別人の顔、体に作り変え、レム睡眠を催眠誘導する学習機械、ドリーム・マシーンにより整形後の人種の、言語、風習、記憶を刷り込むのである。
映画との相違
今作は、歴代のエージェントがOO7ジェームズ・ボンドのコード・ネームを襲名してきたという設定でリー・タマホリ監督は作品を作っている。ボンドがQラボの昔の兵器をみても、これらの兵器を使ったのはコネリーら先代のボンドであって、ピアースではない。だからピアースには「これは使ったことがある、懐かしい」という台詞は喋らせなかった・・・おそらくこれは、出版、公開後のインタビューのため、ノベライズではそれらを見て懐かしむ描写がある。
小説版オリジナルの設定としては、前任者のQの存在を科白にいれることで、前作でRと呼ばれた男がQに昇格したとほのめかしている。
なによりも、ガードナーの頃からあいまいになってきていた秘密情報部の設定について結論を出したことだろう。
フレミングの「海軍省が前身にあたる国防省の中の秘密情報部」が、映画ロケーションによって「陸軍管轄の外務省所属のMI6」に変更されされていたが、今作品においては、本来同一組織であるSISとMI6を異なる二つの組織に別け(本来同一組織でありSISは正式名称、MI6は俗称)、フレミングの秘密情報部をSISとし、MI6のインテリジェント・ビルの一部フロアを借りて、MI6を自分たちの組織のカモムラージュに使っている、リージェント・パークの、国防省の偽装ビルの最上階と次階を借り切っているフレミングのそれと同じにしている。そして秘密情報部を、省の大臣でなく、首相直属の組織に戻している。
いつもの楽屋落ちは、映画で描写されたものに加え、小説では「ナブスター全地球位置把握システム」、数年前に経営譲渡されたというトゥモロー紙の韓国版、アイス・パレスで来客を出迎える、ダイアの首飾りをした猫、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」での肩の脱臼の傷跡などである。
黒い悪玉
小説ならではの楽屋落ちには、他にフロストの毒の動物を忍び込ませて相手を殺すのは、「ドクター・ノオ」でハニーチャイルがやったのと同じである。と、ともに小説ではフロストを悪役足りうる存在に描写し、なるべくしてなった悪女として、レナード、エレクトラ以上の、共犯共生関係が強調されている。
単にオリンピックで金が欲しいばかりにムーンの軍門にくだったのとは違い、勝利のための「戦い」、権力のための「戦い」を開始するという点で、自分に戦いの場をくれるムーンを、勝利者にしてやるのがミランダの生きがいってのもありだろう。「生きがいがなければ生きている意味はない」というエレクトラの思想を(ボンドシリーズの悪女像を)より明確にしている
ムーンと共に同じの大学時代のなれそめから、フロストに「戦い」を提供するムーンと、そのハードルを越えることに喜びを見出し、目となり耳となり諜報活動の成果を返すギブ・アンド・テイクであり、最期の最期までボンドたちを道連れにしようと、言葉で持って時間を稼いで脱出遅らせようとする姿にいたっては、それを超えたもう一人のムーンと化している。
フロストを頭脳として、ザオを腕としてもつ、ムーンは、遺伝子操作で別人になるとき、ボンドの(敵にとって)嫌な性格を移植したように、その闘争心とともにボンドの合わ鏡ととしてお互いに自分の嫌なところを見るわけだから、ボンドとムーンは接するたびに激しく化学反応する。シリーズの中でこれほどまでにアグレシッブな悪党は始めてで、悪になったボンドのテストケースであろう。
本日の拷問
氷水に漬ける。黒サソリで全身を覆う。棍棒で打つ。
本日の
といっても
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