「我々はみんな機械仕掛けの人形にすぎないんだよ」

ゼンマイ仕掛けの人形たち

はじめに
まだユナイト・レコードが存命で、日本ではキング・レコードからボンド映画のサウンド・トラックが販売されていた頃の作品。
「女王陛下のOO7」のライナー・ノーツの中に収録されていた掌編小説で、フレミングの別荘ゴールデンアイで、4月1日発見されたといわれているものである。
実際、プロットの段階のボンド小説のメモをフレミングは2編残しており、まぁ3っつめが出てきても・・・というところだけど、
これはユニオン・コルスの武田一男氏によるもの。
この方はムーア世代のボンド・ファンにとっては伝説と化した方で、サントラ・レコードなのに曲の解説もしなければ、映画の解説もしない(!)ライナー・ノーツのライターの特権を駆使して「趣味のボンド教養講座」を展開した。その啓蒙運動の洗礼をうけて、マニア街道まっしぐらの方もいるはず。
物語書きとしては、こうやって(非合法でも)ボンド小説が書ける場があるのは、羨ましい限りだったわけです。

ストーリィ
3月のロンドンはガラガラ蛇のような、嫌な天気だった。
トレーシーを失ってから6ヵ月。3回の任務に失敗したボンドに落ち込んでいたボンドに任務が下る。
「一週間後、ストックホルムのある男を消せ」と、
ヒースロー空港に降り立ったボンドはスゥエーデン支局のマイケルからMの指令が変更になったことを知る。
場所がフランスのロワイヤル・レゾーに変り、期日も二日短くなったのだ。
憤慨するボンドにマイケルは言った「俺達は命令で動くゼンマイ仕掛けの人形なんだ」と。
パリについたボンドに支給された車はトレーシーを思い出させる白いランチアだった。
「誰を何のために殺すのか」解らないままボンドは狙撃に突く。
1人のフランス人女性のいる部屋にターゲットの男が姿を現した。
ボンドその一瞬、全身の血が逆流する思いだった。
ターゲットはボンドの親友、幕僚主任のビル・タナ―だったのだ。
ボンドは迷った。
撃つんだ、馬鹿、撃つんだっ! 指がボンドの思考とは関係なく引き金を絞った。
ボンドは半ば無意識のまま部屋を出、車を走らせた二分後、ランチアはロワイヤル河岸の松の木に激突した。
ボンドは病院で意識を取り戻す。
目の前に、ビル・タナ―がいた。そして全てを聞かされる。
すべてはボンドがこれからOO課でやっていけるかどうかのテストだったのだ。
しかし、狙撃までに10分もかけてしまったボンドに対して、友人としてビルは怒るのだが、
「ビル、マイケルが言っているんだ。俺達はゼンマイ仕掛けの人形なんだとね」
その後ボンドは日本に向かうことになる。

謎の英文学者(^_^ ;)武田一男氏のお仕事
「OO7死ぬのは奴らだ」
キャラクター相関図風ボンド映画ヒストリー。映画と原作の相違点比較つき
「OO7/黄金銃を持つ男」
OO7/ショッピング・ガイド
スカラマンガの黄金中の銃身になるウォーターマンの万年筆は有楽町そごうで買えるから始まる一大ショッピング・ガイドを展開、しかも海外出張費も含めたボンドの年収を外務省に1974年次の日本円金額で計算させる徹底ぶり(算産出基準はイギリスの上級国家公務員の幕僚主任の次のランクで)ちなみに630万ということだった。
「私を愛したスパイ」
ジェームズ・ボンド年表
「ゴールドフィンガー」
ジェイムズ・ボンドのプロフィール
「ロシアより愛を込めて」
ショーン・コネリー半生記
「ドクター・ノオ」

ジェイムズ・ボンド実在説
ジョン・ピアーソンの小説とは別に氏があげている説では、
海軍情報部時代のフレミングの同僚ドナルド・マックラクランによると、ボンドのモデルは海軍情報部のチーフ、ゴドフリィ提督であり、彼の回顧録をもとにフレミングが書いたのではということだが、実際のところは提督が築きたかった情報部の組織形態の理想像をフレミングが小説の中で再現したらしい。フレミングがMI6という固有名称を一切使わなかった理由はここにあるのかもしれない。


kl