紳士らしく死ね

はじめに
確かにこんなものが出た後じゃあ、次の作品も出版しようと思うには・・・いかんよなあ・・・文春文庫のシリーズもここで途切れたのもわかりますよ。高価な食材で、おもいっきり鍋焦がしたよーな出来栄え。それでも映画の援護射撃もなくて、冬の時代、良くぞここまでガードナー・シリーズを出してくれたよ文春さん、偉い偉いっ感じだ。
今思うに・・・「トゥモロー・ネバー・ダイ」の版権が文春だったら、事態は変わっていたのかも知れないね。やっぱり売れるさ、ノベライズ(汗)

邦題の「紳士らしく死ね」は、物語のクライマックスの拷問シーンでの事。
全裸で台に拘束したボンドに脂を塗りたくり、ハラを空かせたドーベルマンを放ち餌食にするというもので、泣いたり喚いたりと、みっともないコトはしないで、紳士らしく毅然とした態度のまま死んでくれ・・・と皮肉った科白からきている。
で、そのドーベルマンたちを、知恵と勇気で切り抜けるわけではなく、打つ手ナシで途方にくれているところを、敵のアジトを襲撃にきた海兵隊のみなさんに救出されるという・・・ていたらく!
とにかく、行き当たりばったりで、なんならもう1年休めやと思ってしまう。

黒い悪玉
ほんとだったら「ブロークンクロウ」って本題でもよかったのかも知れないが・・・いかんせん・・・悪役の名前がタイトルになるというのは・・・それだけのインパクトがねえ・・・なのに、このブロークンクロウ・リー、鳴り物入りで登場したものの、とんだ肩透かし!
初登場は凄かったんだよ。
人々を捕らえて離さない、有力者たちを信者にしてしてしまうほどのカリスマ。
ネイティブ・アメリカンの高貴な現民族を片親にもつ神秘性。
チャイナ・タウンの中国人マフィアを束ねる裏の顔。
しかも中国共産党にもビジネスで顔が利く。
そして小指のところに親指があるという肉体的奇形。
で、こいつがどんなすげぇ事をするのかと思いきや・・・何もしない。

自分を探りに来たスパイを捕まえでぶんなぐっただけ。

ボンドとリーの最後の対決にしたって、普通ならウィルス浸入までまであと何秒とか、システム・クラッキングまであと何分みたいな背景で、阻止するボンドと対峙するリーというものでしょう。そんなものはない。後日、逃亡先インディアン保護区にある、リーの故郷に行って、民族儀式にのっとった弓矢対決(爆)

付き合うなよ! ダブル・オーだろお前は!

カーヴ作戦
で、英国情報部とペンタゴンが共同して対決する作戦はというと。
表向きは、研究者ごと拉致・殺害した最高機密ローズとローズデイをリーが中国に売却することを阻止すること。
ローズとは長距離深海探知機で「新・私を愛したスパイ」の熱源潜水艦探知装置よりすごい性能らしい。しかしその性能は不明。
アメリカ海軍情報部ルシア中佐曰く
「どんなふうに動くかは聞かないでください」

ローズデイはローズから身を守るための妨害装置・・・

しかし! この任務は表向きだった。
真の任務は・・・・
リーと中国共産党の大陰謀を阻止することだった。
その陰謀とは、ハッキング&クラッキング。つまり西側金融機関のオンラインに潜入してシステムを壊滅すること・・・らしい。
それはそれでいい。だけどねえ!
 
作者はその法方について何一つ考えていなかったのだ。またしても!!

結局、悪の親玉がその陰謀について声高からかに自慢することは、なかった。

というか、陰謀そのものもボンドが調べたんじゃなく、
事件が終わって後から聞いた話レベル。

結局なんだったんだっていうと、ボンドは敵の仲間に化けて潜入したけど捕まっただけ。事件はすべて蚊帳の外で解決していた。ちょっとねえ・・・


kl