
「時は移り、世界は、変わるのだよ。ジェイムズ」
メルトダウン作戦
はじめに
いまでこそ有名なメルトダウンという言葉。さしずめ今だったら「チャイナ・シンドローム作戦」でしょうか? 当時は逆だったんですね。80年代にボンドを復活させるということで、きばってます。ガードナー(笑)。今読むと滑稽です、秘密兵器をリアルを証明しようとしているところが。コミュニケーション・コントロール・システム社は実在する会社らしく、今回の秘密兵器は、ここの「商品」に依存していて、CCS社こそ真のQ課なんですね(^_^;)
ストーリィ
秘密情報部に対する政治的制約の厳しい中、財政的見地より秘密情報部と公安部に対して「より現実的な理論」が展開されその一環としてOO課は廃止された。しかしMは「この国が人を殺してでも危機を救う男」を必要とする時期がくると信じOO課を特別課に改称し、そこにボンドをあてがった。そんなボンドがMの緊急の呼び出しに出頭した。MのオフィスにはMI5のリチャード・ダカン。ヴァレンスの後任のディヴィット・ロス警視補・・・俗にいう野党の連中がいた。彼らは情報部に、フランコ・オリベイロ・ケソクリドアガ(暗号名フォックストロット)がイギリスに潜入、国際原子力調査委員会を追放されたアントン・リュミック博士と接触したという情報をもたらした。野党はフランコの追跡を情報部に依頼するがMがボンドに与えた任務は違った。リュミックの懐に潜入し彼が何を行おうとしているのか探ることだった。リュミックがフランコと接触したということは、何らか破壊行為につながる仕事を行う人間を必要としてくるだろう。ボンドは傭兵という肩書きでリュミックに接近する。
黒い悪役
アントン・リュミック
リュミック家は代々スコットランドのマカディール村の領主であるマカディール侯の地位を継いでいた。ケンブリッジ大学を主席で卒業。史上初の原爆製造・実験のマンハッタン計画に参加、その後、数々の原子力関係の委員会に名を連ねる。科学者ばかりでなく経営者としても強引な手段でエレクトロニクス、原子力、宇宙航空関係会長職、名誉職を手に入れている。そして世界で五指の中に入るファッション・ハウス「ルシオン」のオーナーでもある。彼は原子力の利用反対、核廃棄物処理の危険を訴える団体と同じ思想を持っており、現在使用されている原子炉の使用に対する反対運動を世界的規模に繰り広げていた。
そして自分が開発した、リュミック式超安全原子炉製造を提唱し、その製造資金の提供を国際原子力調査委員会に強要したが却下される。自分の理論が正しいことを証明するために彼はメルトダウン作戦を計画する。それはいかに現行の原子炉が危険なものであるかを大惨事によって証明することだった。メルトダウン作戦において彼は自分の事をウォーロック「妖術師」という暗号で呼ばせている。彼はフランコに西側に対してテロリストとみなされている団体、主義のための殉教者を集めさせ、作戦を遂行させようとする。
メルトダウン作戦とは現行の原子炉の危険性を証明する作戦だった。原子炉はその炉心から連鎖反応によってとてつもない熱を発する、それを制御するのが冷却装置である。その冷却装置が故障するだけで、炉心全体が高温で融解し、中の放射能と高熱が漏洩し、絶えることなく発生する放射能は地表を覆い、高熱は地面を溶かしやがては地球の反対に突き抜けるというチャイナ・シンドローム現象を引き起こす。これは原子力発電所に潜入させていたテロリスト達に、英米露西独東独6ケ所の原子力発電所を同時にジャックさせ、メルトダウンを起こす脅迫によって得た巨額の資金で、自分が提唱する原子炉を製造しようというものだった。しかし報酬の50%を渡すとフランコに約束していたため、フランコを殺すのに傭兵であるボンドを雇うことになる。
ピンクのヒロイン
ラヴェンダー・ピーコック
ほら、古い歌にあるでしょ、ラヴェンダー・ブルー・ディリーディリーって。・・・と親しい人にはディリーと呼んでもらいたい27歳。
リュミックが後見人となっている女性。若き日のローレン・バコールを思わせる容姿はルシオンのファッション・モデルをつとめている。両親を飛行機事故で亡くし、リュミックに引き取られることになるが、彼は彼女を壊れやすい陶器を扱うかのように厳重な監視をつけている。屈強な「番犬」もしくは彼の秘書であるマシュキンの取り巻きを配置し何人をも近づけさせないようにし、リュミックは彼女に近づく男は殺害、もしくは買収で退けていた。
その理由はマカディール侯の正統な血統はラヴェンダーの両親の方が近く、その義理の兄の出現によってリュミックは継承権を返還しなくてはならなくなったからだ。飛行機事故を装って彼らを始末したものの、赤ん坊だったラヴェンダーは助かったため、彼女を手元におき、確実に騒がれずに殺せる次の機会を待っていた。
本日のいかさま
アスコットのゴールド・カップ・レースでリュミック侯のもち馬であるチャイナ・ブルーが優勝する。そのからくりは、双子が生まれたとき一頭だけを登録し、日ごろ弱いほうを活躍させ、ここ一番というときに出来のいいほうを投入する。
本日の拷問
ソープ。正式名称ソティアム・チオペンタル。毒性の強い麻薬のようなもので摂取後朦朧として状態の中で音楽との組み合わせによって幻覚状況を促し、より効果的に自白させる効果がある。メアリー・ジェイソン・マシュキンが用いたのは、スコポラミンとモルヒネの素敵なカクテル。
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